2009年11月11日

ニサッタ ニサッタ


ニサッタ、ニサッタ

ニサッタ、ニサッタ

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/10/21
  • メディア: 単行本




「ニサッタ ニサッタ」  乃南 アサ 著 講談社

気が着けば、今日を生きるので精一杯。

最初の会社を勢いで辞め、二番目の会社が突然倒産し、派遣先をたて続けにしくじったとしても、
住む場所せなくすことになるなんて、思ってもみなかった。
ネットカフェで夜を過ごすいま、日雇いの賃金では、敷金・礼金の三十万円
がどうしても貯められない。

失敗を許さない現代社会で、いったん失った「明日」を、もう一度取り返す
までの物語。
 (帯の 宣伝とあらすじより)

****************************************************************
題名の 「ニサッタ」は、アイヌ語で 明日 という意味

500ページにわたる大作です。、二つ分けてもいいかも。

前半 放浪生活東京編 後半 激闘故郷編。
ページ数もしょうど半分くらいですし。

前半は、読んでいてつらかった。正直、読み終わることができないかと。
主人公の片貝耕平は、フっときまぐれで会社をやめます。
上司がしつこく苛めてくるのに耐えられなくて。
(読む限りだと、上手く立ち回れなかったみたい)
正社員を目指しながらも、派遣で食いつなぐ耕平。
そんな時、インフルエンザを悪化させ、派遣先も住むところもなくなります。
今の社会、うっかり病気にもなれないのね。

それから彼のつらい日々は続きます。
ネットカフェに泊まり歩き、サラ金に返すあてのない借金をして、
取立てのにーちゃんに、説教される始末。
「もう、名前を捨てて誰も知らない所へ行きたい。」
「自分なんか生まれなければよかった。」
深刻な欝と厭世観に見舞われます。

最終的に新聞店住み込み。単純な仕事のようですが、時間を分割されるので
肉体的にも精神的にも疲労する仕事です。
(私も、身内が働いていたのでよくわかります)
ちょっとした事件の後、彼は仕事を辞め
故郷・斜里(知床のある町です)に帰る事に。

後半、(私がオホーツク地方に住んでいることもあって)
「今時、こんなに訛っているわけないべさw」←オイオイ
なんてツッコミいれながら、ちょっと明るい故郷編をホっとした気分で読み進めました
耕平君が自立していくのが、読んでいて癒されます。
そんな時に、新聞店の同僚だった杏奈ちゃんが、突然、来道。
わけもわからないまま、耕平の母親と祖母に気に入られ 杏奈ちゃんは、
ウトロで職を見つけ働き出します。

順調に見えた耕平君の生活も、ある日突然終わります。
まあ、自業自得ってとこもあるけど・・・
それでも、東京であれだけひどい目にあって、今度は、こんな目に。
「自分の存在はないほうが、母親や祖母に迷惑かけないですむ」
打ちひしがれた耕平君。絶望から虚無の世界に直行。
ただ、”本当に死にたいほど本人がつらい” というわけでもなさそうだけど
自殺を考えるあたりの 心情が、読んでいてつらい。
やっぱ、もう立ちあがれないのか・・・

そんな中、杏奈ちゃんのすさまじい生い立ちと心境を聞いた事で、
耕平君は、杏奈ちゃんから勇気をもらったのか。自殺の危機から脱します。
”何も残っていない”と悲観する耕平君には、故郷と肉親という大切なもの
が残ってました。

長い話ですが、オススメです。

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”アイヌ”は 私はなるべく ”ウタリ”と言い換えてます。
民族名がそのまま差別とイジメの言葉になった歴史があるので・・

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2009年12月25日

駆けこみ交番


駆けこみ交番 (新潮文庫)

駆けこみ交番 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫




「駆けこみ交番」   乃南 アサ 著  新潮社文庫
新米巡査の高木聖大は、世田谷区等々力の交番に就任した。
大事件などない閑静な住宅街で、不眠症のおばあさん神谷文恵の夜の
話し相手が、聖大の目下の役割だった。
ところが、ひょんなことから、聖大は指名手配中の殺人犯を逮捕する
という大手柄を立てた。
以降、文恵の態度が微かに変化する。
文恵を含む七人の老人グループが聖大に近づいてきた・・・。
人気沸騰中、聖大もの4編を収録
  (裏表紙より)

****************************************************************

聖大は、彼女にフラれた事をきっかけに、ヤケで警察学校に入り、
なんとなく警察官になったようです。
そこで、学校や見習い期間中は、いろいろ騒動を起してたようです
(このあたりは、「ボクの町」 聖大シリーズ1作目に出てます)

末国善巳さんの解説が、とても分かりやすかったです。
主人公の聖大は、
「ボクの町」では、そのチャラ男ぶりが、組織社会で適応するまで
「駆け込み交番」では、自分の仕事の意義ややりがいについて
いろいろ考えてます。
2冊で一つと考えてもいいですが、この「駆け込み交番」だけ読んでも
充分わかります^^)

”とどろきセブン””サイコロ””人生の放課後””ワンワン詐欺”
の4つの連作短編。
題名が、おもしろいですネ^^)

”サイコロ”では、児童虐待の一つ・ネグレクトに対して、なかなか
今の体制では、対処できづらい というのが印象的でした。
(常識的にいうと、地方住民・学校→児童相談所ってとこでしょうか)

オレオレ詐欺ならぬ ワンワン詐欺ww
なんの詐欺なのかは、読んでのお楽しみ^^)

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2010年01月09日

凍える牙


凍える牙 (新潮文庫)

凍える牙 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 文庫




「凍える牙」  乃南アサ 著  新潮社文庫

深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!
痛いには獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は、
相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。
やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。
この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?
野獣との対決の時が次第に近づいた。
女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の
超ベストセラー
  (裏表紙より)

*************************************************************
「風の墓碑銘」が おもしろそうだったので、シリーズの最初から
読んでみました。
1996年に刊行された物語で、文庫本は、今回読んだのは、21刷。
チョウ・ベストセラーです。今春から TVドラマ化されるとか

人間が爆裂するように発火する という衝撃的事件を追ううちに、噛み傷から どの犬種にも該当しない獣 という結論から、「あれれ??」という間に、警察犬や訓練所、そしてウルフドッグという存在まで辿り着きます。

主人公の音道刑事は、職場ではハレもののように扱われ、
相棒の滝沢からは事あるごとに、ネチっこく”女性が刑事である”事へのイヤミ・中傷。滝沢同様に、皮肉をいってくる同僚。

これは、男性不振になってもしかたないくらい。
私なら、何度もキレます^^;で、そのたびに「これだから女のヒステリーってのは・・」なんてイヤミをまたうけ・・

主人公は、ただただ地道に仕事をすることで、やっと滝沢に
認識されるようになります。

ところで、男性は世の女性より、はるかに保守的かもしれません。
主人公がどんどん、警察で活躍の場を広げていくと同時に、
主人公の元・旦那は、浮気に走ります。
男ってのは、自分より格下の女性に、安らぎを求めるんでしょうね。

対して、女性の登場人物でも、妹の智子ちゃんと母親は、
主人公に比べると、今一です。
確かに智子ちゃんは、優しい性格だけど、
”要は不倫を反対する両親の元を離れ、忙しい姉と同居し自分の好きに暮らしたい”→不倫を続けたい です
姉から断られると、自殺騒ぎを起す・・
(そんなに 相手の事が好きなら、自分で自立してからですね。姉と同居して、無意識に自分の都合のいいように事を運ぼうとする)

滝沢さん、別称・皇帝ペンギンは、いい味だしてます。
イヤミでメタボでどうしようもないけど、そんな自分をもてあまし気味

オオカミ犬の孤高の姿が、主人公と重なって、
ハ〜ドボイルド でした^^)
とてもおもしろかったですww

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2010年01月30日

花散る頃の殺人


女刑事音道貴子 花散る頃の殺人 (新潮文庫)

女刑事音道貴子 花散る頃の殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 文庫




「花散る頃の殺人」  乃南アサ 著  新潮社文庫
「凍える牙で、読者に熱い共感を与えた女性刑事・音道貴子。
彼女を主人公にした初の短編集。
貴子自身がゴミ漁りストーカーに狙われて、気味悪い日々を過ごす
「あなたの匂い」。ビジネスホテルで無理心中した老夫婦の、つらい過去
を辿る表題作など6編。
家族や自分の将来に不安を抱きつつも、捜査に追われる貴子の日常が
細やかに描かれる。
特別対談に「滝沢刑事と著者の架空対談!?
  (裏表紙より)
***************************************************************
女性刑事・音道貴子シリーズは、
「凍える牙」「花散る頃の殺人(短編)」「鎖」「未練(短編)」
「嗤う闇(短編)」「風の墓碑銘」 
と、合計6冊刊行されてます。

「凍える牙」では、滝沢刑事のしつこい(w)女性蔑視に負けずに、
離婚の痛手や、実家での家族のゴタゴタまであり、決行大変でしたが
2作目の「花散る頃の殺人」では、その事件から1年の出来事を綴ってあります。
音道刑事も、少し明るくたくましくなってます^^)

6つの短編は、それほど大きな事件ではないですが、悲惨です。

「あなたの匂」・・ゴミ漁りが(生活の手段ではなく)趣味、って人、
いるんだ。確かに不気味だけど、粗大ゴミなんかは、使える物も多い
らしいんだけどね

「冬の軋み」・・家庭内暴力も、女の子が暴れるというところが
ポイント。
「嫌いだから暴力を集団で振るう、死んでもかまわない」
こんな子に育てた親の責任もあるですね

「花散る頃の殺人」・・ネタバレになりますけど、60過ぎの男性の
自殺って、最近、多いですね。私は、この谷恭三。
男性としては、最低ランクにおきますね。
自分が死んでも、連れ合いは少しでも長生きしてほしい。そう考えるのが
普通でしょ?それとも谷さんは、いわゆる欝だったのかも。

それにしても、自分の妻の実の息子に お金を生涯仕送りしていたのに、
最後に、その息子の持っている劇薬で自殺する。その後、息子にふりかかる
トラブルを考えないところが、やはり、"実の親ではない”と寒い気持ち
になりました。

「長夜」・・飛び降り自殺にほぼ決まりだけれど、動機をもとめて、
女性の交友関係を調べるうちに、
愛されても不幸な自分を求めてしまう
哀しい人生が浮かんできました。

「茶碗酒」・・あの皇帝ペンギンこと滝沢刑事が出てくる、ショート。

「雛の夜」・・雛は、雛人形の雛なんでしょうけど、雛鳥の雛の意味
でもありそうです。雛=援助交際で痛い目を見た女子高生。
援助交際をしようとする女子高生に、声をかける音道刑事は、
「うざいオバン」なんて言われますが、結局、彼女らは若いというより
ぴぃぴぃなく雛なんですね。

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2010年02月14日

いつか陽のあたる場所で


いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)

いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫



「いつか陽のあたる場所で」  乃南アサ 著  新潮社文庫

小森谷芭子29歳、江口綾香41歳。
ふたりにはそれぞれ深い過去があった。
絶対に人に知られてはならない過去。
二人は下町の谷中で新しい人生を歩み始めた。
息詰まる緊張の日々の中、仕事を覚え、人情に触れ、少しずつ喜びや
笑いが出始めた頃ー。
綾香が魚屋さんに恋してしまった!
心理描写・人物造詣の達人が女の友情に切り込んだ大注目の新シリーズ
ズッコケ新米巡査のアイツも登場。
 (裏表紙より)

***************************************************************
4つの中篇でなっている物語。

同じ釜の飯・・綾香が魚屋に恋する話です。大石のジジィwの
以外な一面も出てきます。ここで、二人の過去があかされます

ここで会ったが・・近所で起きた仏像盗難事件の解決に、あの聖大君が
登場ww。別のシリーズでみると、なんとも天然な青年でした。
聖大君は、芭子に気があるようですが、
芭子は、心底、非常に迷惑してるようです。

唇さむし・・貧乏な二人は、ある小さなスナックで、
格安でカラオケ三昧。楽しそうです。
ちょっとした息抜きになってました。
でも、そのスナックのママは、裏のある人で、
綾香がひどい目に会います。。。

すてる神あれば・・芭子は、”海外帰りのバツ1”という触れ込みで
パートしてましたが、その職場(マッサージ院)で、
セクハラを受けます。
身体に触られた事よりも、人を侮辱して決め付けるような院長の態度に
唖然としました。
結局、仕事はやめることに。
ちょうどそのころ、弟が訪ねてきて、遺産の生前分与とひきかえに
分籍(戸籍を独立する)の手続きをせまってきました。
未来に希望も何も見えなくなって絶望する芭子。
そんな彼女を勇気付けたのは、綾香の働く姿でした。

☆  ☆  ☆
おもしろかった^^)
特に興味をひかれたのは、「すてる神あれば」の話。
ここで芭子は、何が好きなのか?何を目指せばいいのか?
途方にくれてます。
大学生の時は、将来の事を考えずに漫然と生きてきたツケかな。

母親の態度にも問題あったのかも。
家が格式高く金持ちだから、”ごく普通のお嬢さん”に親は
育てたかったんですね。

で、芭子は すでに両親から絶縁されてるのですが、
この話で決定的になります。

芭子は、「犯罪を犯す時に、すでに自分のほうから親を捨てていた」と
あきらめたようですが、
いくら”どうしようもない娘”とはいえ、
芭子の生きていた痕跡を家に すべて消してしまおうとするとは・・・

「お金と祖母の家を与えたのだから、親の義務は果たした。
後は、もうかかわらないでくれ」という態度。

そこまでの事をしでかした・・のかな・・

世間より家族からの風が、寒気団なみに冷たいです。

次は 綾香ねーさんの話が読みたいですね。
(この人は、我慢に我慢を重ねて、ついにぶっとんで、冷静に
事をなした。子供の命にかかわるから、母親の本能なんでしょう)

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”ナシワリ”って、品の反対読み+割り出すのワリね・・きっと

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2010年03月04日

鎖 上


鎖〈上〉 (新潮文庫)

鎖〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 文庫




「鎖(上)」  乃南 アサ 著  新潮社文庫

東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。
音道貴子は警視庁の星野とコンビを組み、捜査にあたる。
ところがこの星野、エリート意識の強い、鼻持ちなら無い刑事で、
貴子と常に衝突。とうとう二人は別々で捜査する険悪な事態に。
占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、
貴子は銀行関係者を調べ始めた。が、ある退職者の家で意識を失い、
何者かに連れ去られる。
 (裏表紙より)
***********************************************************
音道刑事シリーズもの、長編では2作目。

最初、音道刑事の拉致されて意識が朦朧としている場面から。

4人惨殺(しかも抵抗できないように縛ったまま)
まるで家畜でも殺すように、首をかっきる。
こういうのって、恐ろしい。
「恨みでメッタざしにした」とか「口論のすえに殺した」とかじゃない
人間の命を奪う事に、なんのためらいもなく、かつ非常に冷静。

音道刑事が拉致されたのは、どうも不運(幸運?)な偶然が重なった
ようですが、なぜ、拉致したまま連れていったのか、上巻を読むかぎりではその動機が今一わかりませんが、下巻でわかるかな
(もうすでに、5人殺しているのに・・)

拉致されている間、音道刑事は、時間だけは、たっぷりあるので、
自分の過去や、拉致した犯人の過去とか、
いろいろ考えることになります。

さて、星野刑事は、3月の読んだ本の中で、
最低男NO1 に輝きそうw

音道刑事も、星野刑事とは、最初はおっかなびっくりでも、なんとか
やっていった。
音道刑事が 星野を振ったとたん、陰湿なイジメが始ります
この星野は、(呼び捨てでw)、”とても好きなのにフラれたから”ではなく、自分の自尊心が傷つけられた事に、腹を立てているのです。
エリートとありましたが、これは自称かもね。
全然、仕事出来ないし頭も回らない。かといって、地道に努力するタイプでもない。
まあ、それなりに (上巻)では、むくいを受けてましたが。

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2010年03月06日

鎖 (下)


鎖〈下〉 (新潮文庫)

鎖〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 文庫






貴子が目を覚ますと、廃屋に監禁されていた。
一方、行方不明の貴子を救出するために特殊班が編成され、
かつて彼女と組んだ滝沢刑事も加わる。
やがて犯人らの巧妙な現金奪取計画が明らかになり、貴子も犯人の中の
女性を説得し、懸命に本部との連絡を試みる。
が、特殊班はなかなか潜伏先にたどり着けない。
ついに貴子の気力、体力も限界に・・・。
傑作「凍える牙」の続編!
 (裏表紙より)

***************************************************************
続編といっても、まったく別事件なので、刑事音道貴子シリーズ第二弾
ってところでしょうか。

拉致・監禁されたことは、ここまでも人の精神にダメージを与えるものだとしっかりわかりました。
上巻では、けなげだった音道刑事も 
だんだん思考がマイナスになったり、やる気がなくなったり、
「いっそ犯人と一緒に海外に逃亡したい」ってような
気持ちになったりもしました。

ギリギリの精神状態の中、救いの声になったのは、滝沢の励まし。
そういえば「凍える牙」では、滝沢は内心では音道を認めながらも、
最後まで、そっけない態度で終わりました。
この年代の人の感情表現のヘタさは、はがゆいほどです。

狂人ともいえる堤の暴力などに、怯え、しだいに 無力感におそわれる音道。そんな彼女は、堤の愛人・中田が、堤の猛烈な暴力にも黙って耐えてるのを、音道なりに理解しようと(そして説得しようと)試みますが、ことごとく失敗し、また、受けた暴力から、
”暴力によって、人の感情や理性を押さえこまされる心理”を実感します。

最低男NO1に見事輝いた星野君ですが、堤は、もはや 男(人間)でもない
自分の事しか考えない 三下悪魔 ってとこでしょうか。
獣といったら、獣に失礼ですww

題名の”鎖”は、文字通り、音道を縛る鎖
その他,中田を堤にしばる鎖、最後の最後ででてきた犯人達の親・子供への、心の中のたちきれない鎖のことのようです。
あの堤でさえ、説得のために警察に父親を呼ばれたことを、非常に憤慨してます。
感情が動くということは、何がしかの思いが残っているということ
でしょうか。

最近、DVが社会問題になってますが、花嫁修業にお茶・お花 と一緒に、空手・ボクシング なんてのが項目になる時代かも

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2010年04月02日

嗤う闇


嗤う闇―女刑事音道貴子 (新潮文庫)

嗤う闇―女刑事音道貴子 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫




「嗤う闇」  乃南アサ 著  新潮社文庫

レイプ未遂事件発生。
被害女性は通報者の男が犯人だと主張。被疑者は羽場昴一(主人公の
恋人)。レイプ事件の捜査に動いていた音道貴子に無線が飛び込む。
昴一がレイプ犯?被害者は、大手新聞社の女性記者。
無実の通報者に罪を着せる彼女の目的は?
都市生活者の心の闇を暴く表題作など、隅田川東署へ異動となった
貴子の活躍を描くシリーズ第三弾。傑作短編四編収録

***************************************************************
「鎖」で心身ともに痛手をおった貴子。
前作の短編集「未練」でその立ち直りが描かれています。

「闇に嗤う」は4つの短編、
親子関係と夫婦関係を事件を通し主人公の音道貴子刑事が、いろいろ
悩み考えます。普通の刑事物というより、都会の人情シリーズかな

「その夜の二人」・・ここでの発端は、激しい親子喧嘩から。
飾り職人の父親と、後をついだ息子が、一見、遺産を争うようにみえて
実は、根底では心配しあってます。
もう一つの事件が、信じられないくらい。冷徹な犯人でした。
都会の下町特有の人情も、若い人には”うざい、わずらわしい”
ものだったのでしょうか。
嫌であれば、はっきり断ればいいし無視すればいい。

そこを簡単に殺してしまうところと、
「理系は医者、文系は弁護士」というのが勝ち組で 
それ以外の人を見下す若者の意識が、鼻持ちならなかった。

「残りの春」・・往年の映画スターが起こす、ささいな事件。
活躍した俳優さんでも最後は一人で余生を暮らす というケーズは
現実にも少なくはないでしょう。
「お一人様の老後」でも、いろんな選択肢があってもいいね・・
例えば、気のあった友達と暮らすとか、間借り人を置いてみるとか
いっそ、"家では一人で過ごす”を貫くとか

「木綿の部屋」・・まってました。滝沢警部の登場www
今回は、滝沢警部の娘・直子と夫の谷との間のトラブルに 
父親の滝沢と ちょうど、いあわせた音道が巻き込まれます。
それにしても、谷さんも大胆。ベテラン強面警部にウソをつくとは・・
直子の部屋は、かわいらしく隅々まで掃除ももちろん、かわいい小物を
置き、メルヘンに出てくるような部屋。

そこで述べられる直子の生々しい声には、女性のはしくれとして、
「はぁ〜〜だから〜〜}とツッコミをいれたいくらい。
夫の浮気性にしても、「彼、優しいから放っておかないの」って直子の言葉も・・(そんな彼をゲットした自分ってすごい)って自慢?
に聞こえるww
さめざめと 「貯金も全部 貢いで 借金もある」といい、
その使い道を直子は、知らない。追求すると嫌われると思ってるのか
そんな悲惨な状況の自分に酔っているのか・・

やがて夫の谷の嘘がばれ、直子は突然キレる
この追求のすごさは、さすが滝沢譲り。
最後に、直子は音道の車に同乗させてもらい実家に帰るつもりでしたが
滝沢が、ピシャリっと断ります。
「これ以上、ふりまわすな」って
結局、直子は実家に帰っても、同じことを繰り返すでしょう。
実家で滝沢と喧嘩→ 谷の所に戻る→喧嘩 →実家にもどる・・・
無限ループがみえます(←占い師か!!w)

「嗤う闇」・・連続レイプ犯の捜査にかかわる音道です。
これを読むと 結構東京といっても、
セキュリティは穴だらけなのね って事。
疑いだしたらキリがないけど、チグハグな状態はよくないでしょう

音道と昴一の間は、また一つ 進んだようです。でも この二人
結婚に進むのかな・・あまりそんな感じがしない

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2010年05月11日

未練


未練―女刑事音道貴子 (新潮文庫)

未練―女刑事音道貴子 (新潮文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 文庫




「未練」  乃南アサ 著  新潮社文庫

ふと入ったカレー屋で音道は、男が店主に
「こいつは俺の女房を殺した」と怒鳴る場面に遭遇する―男同士の絆が
無惨に引き裂かれてゆく様子を描いた表題作。
公園の砂場で保育園児が殺害され、
その容疑者の素性に慄然とする音道…「聖夜」。

監禁・猟奇殺人・幼児虐待など、人々の底知れぬ憎悪が音道を苛立たせる。
はたして彼女は立ち直れるのか?好評の音道シリーズ短編集第二弾。
 (「BOOK」データより

*************************************************************
拉致監禁されひどい目にあった音道刑事のその後の日常を描いた
短編集です。

「未練」・・表題作にもなってます。純愛の一途さとストーカーと執着
どれも紙一重なんですね。
いくら自分が苦しいからといって、女房に暴力を振るう男は、最低。
しかも、未練があるって・・「それって愛じゃないよね」

「山背ふく」・・ 拉致監禁事件でひどいPTSDになった音道刑事。
休暇をとり、旧友に会いに行きます。そこで偶然、幼児を人質にして
保育所に立てこもる事件に遭遇。自分の過去を逆の立場で再現することで
なんとか、事件の後遺症から立ち直ります

「聖夜まで」・・これは、どうにもやりきれない事件です。
幼児虐待をとりあつかった話しですが、一歩間違えると、平和な家庭も
こうなるかと思うと、ゾっとした。
”砂場で女の子を殺したのは、頭のおかしい変態だった、最近の世の中って
どこか狂ってるよね”
っていう結末のほうが、逆にまだ救いがあったかも

この短編集で、一番印象的だったのは、「聖夜まで」でしょうか
現代の悲劇、重い話でしたが、深かった・・

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2010年09月16日

紫蘭の花嫁


紫蘭の花嫁 (文春文庫)

紫蘭の花嫁 (文春文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 文庫




「紫蘭の花嫁」  乃南 アサ 著   文春文庫

「あいつから逃げなきゃ!」
執拗に追ってくる男の影に脅えつつ、逃亡を続ける三田村夏季。
同じころ、神奈川県下では不可解な連続女性殺人事件が起こり、刑事部長の
小田垣の苦悩の日々が始まった・・・。
追うものと追われるものの心理が複雑に絡み合い、やがて衝撃のクライマックスへ

傑作長編ミステリー

*********************************************************************
このミステリーは、1992年に刊行されたものの、文庫化したものです。
携帯電話が普及してから、ミステリーの世界は、だいぶ変わったそうです。
刊行されてから約20年、古さを感じることなく、おもしろくて 怖くて・・
一気に読みました。^^;

物語は、3つの視点で書かれています。
一つは、誰かに執拗に追いかけられている三田村夏季
一つは 蘭の栽培を趣味にしている 警察エリート官僚の小田垣
一つは 快楽連続殺人犯の心境と半生です

途中から、「あ。これは作者にミスリードされてるな」と思いつつも
「え!!!」というような驚く事実が出てきます
「そんなんミステリーでありなんか?みたいな・・」

快楽殺人犯の 快楽を語る箇所や、女性に対しての侮蔑は、読んでいて胸が
悪くなりました。
確かに境遇には同情するけど、両親が離婚し 父親のもと、再婚した義母と
暮らす。、そんな家庭で、父や義母に疎まれながらの少年期を過ごす
そんな例は、決して特殊なものでもない気がするのですが・・・

なぜ カレは殺人に快楽を覚えてしまったのか?
やはり、生来のものなのかな。

最後の最後のページが、ゾっとしました。(ーー;)
実際に記述はないけど、読み手には、十分 ”悲劇的結末”が予想でき・・
(そうしたくないんだけどね。こういう手法って、恐怖をあおるのには、最適)
文句のないハッピーエンド。。。ではないです。。おおコワ

ところで この話、TVの「相棒」で出てきた話を思い出しました。
あの前後編の話は 特におもしろかったけど、この「紫蘭の花嫁」を
参考にしたのかも

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2011年03月11日

犯意

犯意 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ, 園田 寿 (著); 新潮社 (刊)

「犯意」   乃南 アサ 著  新潮社文庫

些細な出来心だった。偶然と勢いが重なって 罪が増殖していく・・・
雪球が転がるように・・・。
最初はとてもいい人だった。気を許し、好きになったころからアイツは本性を
あらわし始めた・・・・
普通の人が犯罪に手を染めてしまう瞬間。哀しくて、やりきれなくて、そして
甘美でエキサイティング。
弁護士の解説を各編に付す新しい形式の犯罪小説集。
12の傑作ノワールが心を奮わせる。

****************************************************************
この本を読むのには、私はパワーが必要でした。
まず、乃南さんの小説は、魅力的ではあるけど、犯罪者、被害者の話で
あるので 当然、暗い。
突拍子もない犯罪ではなく、何処にでもよくありがちな犯罪。
小説の中で、救いの結末はないです。

そのあと、弁護士の園田先生の ”素人でもわかる 物語にでてきた犯罪の解説”
それでも、難しかった・・・
物語を読んで暗くなったのは、よけておいて、鈍い頭を総動員して、解説を
読みました。

最後は、北尾トロ先生の解説。これが、わかりやすかった^^;
11話目「逃げたい」の解説で、DVで悩む主人公は、実は 裁かれることに
なるのだけど、執行猶予がつくかもしれないとのこと。
でも、北尾先生は、「ちゃんと償ったほうがいい。後で後悔で自殺する事に
なるかも」と。。なるほど。。感心しました。
裁判員制度を視野にいれた解説でした

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2011年04月10日

風の墓碑銘 上

風の墓碑銘(エピタフ)〈上〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)

「風の墓碑銘 上」 女刑事 音道貴子   乃南 アサ 著  新潮社文庫

貸家だった木造民家の解体現場から、白骨の死体が発見された。
音道貴子は、名主の今川篤之から店子の話を聞こうとするが、認知症で要領をえず、収穫のない日々が過ぎていく。
そんなある日、その今川が殺害される。
唯一の鍵が消えた。
捜査本部が設置され、刑事たちが召集される。
音道の相棒は、・・・、滝沢保だった。「凍える牙」の名コンビが再び。
謎が謎を呼ぶ難事件に挑む、長編ミステリー

************************************************************************
名コンビのような、迷コンビのような・・

上巻では、まだ 事件の謎ばかり提示され、解決の道が 遠いかんじかな。
下巻を読むのが楽しみ^^)

滝沢家は3人兄妹で、姉は 嫁いで家をでている(短編で出てきた)
妹は、しっかりもののようで、母親いない家庭での 家事、もろもろやってきたようです。
息子は、この無頓着さは、滝沢刑事は「母親に似てる」といってますが、
家事の無頓着ぶりは、おそらく 父親の生活態度をみて、まねているのだと思う
滝沢家の様子がでてきて、おもしろかった。

音道貴子の恋人が・・・・・・後は読んでのお楽しみか^^;

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2011年04月12日

風の墓碑銘 下

風の墓碑銘(エピタフ)〈下〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)

「風の墓碑銘 下」  乃南 アサ  著   新潮社文庫

白骨死体、今川老人殺害事件、父娘惨殺事件。
これらの事件に関連はあるのか。
音道貴子のたてる仮説は、深く重く沈殿しつつあった捜査を大きく動かした。
一方、刑事を語る男が捜査を乱す。自分は何なのか。誰が情報を漏洩しているのか。
深まる謎と謎が交錯し、溶け合っていく・・・。
人間の欲望という業が産み落としていく悲しみをスリリングに描いたシリーズ最高潮の人間ドラマ

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この物語は、”殺人罪には時効がない”という法律が出来る前だから、犯人は捕まりましたけど、
過去の罪は、問われてくことはないでしょう。

凸凹コンビの音道と滝沢も、だんだん、調子があってきます。
仲のよい友達ではなく、信頼できる相棒として

さて、犯人ですが、さすがに生い立ちには、同情すべきところはありますが、この罪悪感のなさは、
恐ろしい。
”しかたがなかった””こうなったら、亡き人(自分が殺した人)の分まで 人様のために奉仕して生きる” そう連発する犯人には 人格異常者??にも思えるけど、たいがい、罪を犯した人で、こういう言い訳をする人は、多いのか。

つい最近の事件でも、(母子殺害)「非常に申し訳ないことをした。生きて償わせてほしい」という被告の言葉が、ある裁判のニュースでのってました。(遺族は死刑を希望)
遺族の思惑はどうであれ、償いがどうであれ、”生きて”というところが、ミソね。

DNAの自己保存の本能かな。本編の犯人までいくと、 六道からはずれた 外道かな
人間が人間であるためには、つねに良心とか罪の意識とかが、大切と思いました

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2011年04月26日

5年目の魔女

5年目の魔女 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)

「5年目の魔女」  乃南アサ 著   新潮文庫

三回のコールの後に切れる不気味な電話。
あでやかで奔放、計算高く身勝手。魔性を秘めた女・貴世美。
関係を持った妻帯者の上司を狂わせ、友達だった景子は退職を余儀なくされた。
5年という歳月が過ぎて、景子はインテリアデザイナーとして、新しい一歩を踏み出したその矢先だった、景子の部屋の電話が三回鳴った・・・。
女という性の持つ深い闇を暴く、長編サスペンス

********************************************

物語は、三人称で どちらかというと、景子の見方を中心に 描かれています。
景子の友達で同僚の貴世美は、たしかに、その通りの女性で、しかも執念深い。

ただし、この勤めていた会社も・・・
上司の新田は、貴世美と不倫をしてのめりこんだのだけど、それまでにも、わかい女子社員に手を
つけたようです。(遅かれ早かれ、女性で失敗する人でしょう)
貴世美は、商売であてて、お金持ちになりたいらしく、そのために、新田を利用した。

景子は、被害者のような形で語られ、5年後に狂ったかのように、「貴世美がみている」と追い詰められるのには、それなりのわけがありました。

まず、最初に 貴世美が不倫をしたときに、絶対に他の同僚に言うべきではなかった。
、貴世美と新田のあからさまな態度で、周囲にその関係が知れ渡ったとしても、無言を通すべきかな。だいたい、友達として約束したのだから、そこは守らないと。

同属嫌悪ってとこか、二人の魔女 表に出すかどうかの差しか 結局なかったのか

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2011年05月13日

6月19日の花嫁

6月19日の花嫁 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)

「6月19日の花嫁」  乃南 アサ 著  新潮社文庫

私は誰・・・・?6月12日の交通事故で記憶を失った千尋。
思い出したのは、一週間後の6月19日が結婚式ということだけだ。
相手はいったい誰なのか?”自分探し”を始めた千尋の前に、次々と予想外の事実。
過去のジグソーパズルは埋められるのか・・・・。
「結婚」にゆれる女性心理を繊細に描き、異色の結末まで 一気に読ませる、直木賞作家のロマンティックサスペンス

***************************************************************************
一気に読みました^^;;目がぼろぼろ。

たった1週間のことなのに、これだけの内容の濃さはすごい、波乱万丈 七転八倒で 主人公は
運命に 翻弄されたままです。

ここからは、未読の人はご注意を、ネタバレになります。



結局、2年前の6月19日も昨年の6月19日も、そして今年も 後1週間となっった時、主人公は
ひどい目にあいます。
最初、多重人格を考えたのですが、素直に記憶喪失でした。

もともとをさかのぼると、死んだ母親の言葉「父からは、遺産をぶんどりなさい」というのが
ネックになり 事態はこじれていきます。
もしも、私ならば、母親の言葉はともかく、幼い子供を捨て女に走った父親の遺産など、びた一文
もらいたくないですが・・・
主人公は、そう思わなかったみたい。
ひどい目にもあいますが、結局、それが いい治療法になったのか、物語は、ハッピーエンドで終わります。

登場人物でトモヨちゃん、一番かわいいです^^)

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2011年07月10日

ウツボカズラの夢

ウツボカズラの夢 (双葉文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 双葉社 (刊)

「ウツボカズラの夢」  乃南 アサ 著  双葉文庫

高校を卒業した未芙由は、上京し、親戚の鹿島田家で暮らすようになるが、家族がどうも変なのだ。
顔を合わすこともなく、皆、てんでばらばら。
しかし、お互いを嫌悪しているわけではない。
では、この妙な違和感はなんなのか? 未芙由はやがてその正体に気づく。
それは平穏な日常を変容させるものだった。・・・「幸せ」を望むのは罪なのか。
物語の最後に残るのは、「崩壊」か「誕生」か。
直木賞作家が描く、人間の欲と真実。

**************************************************************************
結構、厚めの450ページ。「最初は、平穏にいくのかな」と思ったら、びっくり。
未芙由ちゃんは、父親が新しい母親(赤ちゃんがいる)が暮らすのに邪魔になったので、
地元を追い出された形です。
東京に勢いででてきたはいいけど、叔母さん(鹿島田)の所へいくも、話が通っていなかったので
あやうく 路頭に迷うはめに。
最初から、話にひきこまれました。

さて、登場人物ですけど、、珍しく、出てきた主な登場人物を、好きになれませんでした。
(最後にチラっとでてくるホテルマンの研輔のひたむきさに、癒されました^^))

家庭には ほぼ無関心。若い女と快楽だけを追う 夫
不平不満ばかりで、倫理観も自制心もなく、反抗的な娘
偏屈で頑固な祖父母
後で、不毛の愛に走ってしまった 母
人生なめきってるような 息子(それでも まだましかも)

お互いを信頼しているというより、都合のいい部分だけ利用しあってる家族・・ってとこか
それでも、なんとかしようとした母親は、ストレスがたまり、キレてしまいましたが。

家族は、バラバラの中で未芙由は、懸命に家事やアルバイトに頑張ります。
ここまではよかったけど、未芙由はそこの”旦那さま”と 肉体関係に・・
さすがに、居候させてもらってるので、拒否しずらかったのか。
”旦那さま”は、女性は常に自分の思い通りの反応をしめさないと、満足しない勝手な人で、
未芙由は、心理をうかがいながら演技するところに、私はびっくりしてしまった。

ウツボカズラ・・・ツボのような形の食虫植物で、中に虫が入るのをじっとまっているそうです。
解説に、”誰がウツボカズラか”ってありましたが、
解説にあったとおり、表は未芙由 裏は祖母 ですね

単身赴任から帰ってくる父親と、ニュージーランドにいった娘には、もはや 鹿島田の家には、居場所
はないかもしれません。
まがりなりにも、細い糸でつながっていた母親が 出て行ったのですしね。

怖い話でした

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2012年12月20日

すれ違う背中を

すれ違う背中を (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)

「すれ違う背中を」   乃南 アサ 著  新潮社文庫
パン職人を目指して日々精進する綾香に対して、芭子はアルバイトにもなかなか採用されない。
そんなある日、ビッグニュースが!綾香が商店会の福引きで一等「大阪旅行」を当てたのだ。
USJ、道頓堀、生の大阪弁、たこ焼き等々初めての土地で解放感に浸っていた彼女たちの前に、
なんと綾香の過去を知る男が現れた…。
健気な女二人のサスペンスフルな日常を描く人気シリーズ第二弾

***********************************************************************************
刑務所帰りの女性二人の、日常の話。
”梅雨の晴れ間に””毛糸玉を買って””かぜのひと””コスモスのゆくえ”
の4編で出来てます。読み進むにつれて、二人の生活が、だんだん波にのっていくのが、
読んでいて うれしくなります(一巻目の「いつか陽のあたる場所で」は、ちと暗かった。

おすすめは、”コスモスのゆくえ”
コスモスさんのような女性には、私は出会ったことがないけど^^;;
DV被害者の「彼も苦しんでいる」っていう 暴力夫を擁護するパターンは、ありがちかもね。
”私がいないと、この人は・・”とか”私の力で 暴力の癖をなおしてやる”とか
そういう 間違った保護欲に支配されてしまうのでしょう。
アッケラカンとしたコスモスさんの末は・・・・長い期間にはならないでしょうが、
本人、目を覚ますかどうか、微妙だ。
「私がしっかりしていないので、彼にこんな事をさせてしまった。私が悪いんです」
って 言う姿が目に浮かぶ。
そんな自分を哀れむのに、幸せを感じるのかな。「私ってなんて不幸な女なの」wってね

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このシリーズが、来年、NHKでドラマ化されるそうです
posted by kiyorin at 00:54| Comment(0) | 乃南 アサ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月16日

自白 刑事・土門巧太郎

自白 刑事・土門功太朗 (文春文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 文藝春秋 (刊)
「自白 刑事・土門巧太郎」  乃南 アサ 著    文春文庫

“アメリカ淵”と呼ばれる渓谷で発見された女性の全裸死体。手がかりは仏が身に
つけていたネックレスただひとつ…。警視庁捜査一課の土門功太朗は、徹底的な
地取り捜査で未知の犯人ににじり寄る。やがて浮かんだ容疑者。息詰まる取調室
の攻防。懐かしの昭和を舞台に、男たちの渋い仕事っぷりを描いた
ノスタルジー刑事小説
***************************************************************************
4つの短編からなってます。今一、迫力にかけてましたが、土門刑事の子煩悩な
処は、あきらめない処、メモ魔であること、は、よくわかりました。

印象に残ったのは、”渋うちわ”かな。
夫を殺した妻を自白させるんだけど、簡単に話すし、凶器も隠し方がずさん。
計画的に考えてた事とはいえ、この大雑把さは、殺人を非常に軽くみてる。
妻のあっけらかんとした罪悪感のなさと、手伝った男の狼狽振りが想像できるのが
おもしろい。自首しないかぎり、この手伝った男は、一生、このことを背負って
いくでしょう。自首して収監されたほうが、楽かも

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posted by kiyorin at 01:33| Comment(0) | 乃南 アサ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月11日

禁猟区

禁猟区 (新潮文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 新潮社 (刊)
「禁猟区」  乃南 アサ 著   新潮社文庫
ホストにいれあげている中年女・若山直子の資金源は、ホストクラブで借金がかさみ、
身動きのとれなくなった少女たちだった。経営者を脅して得た顧客情報から、
未成年者の親に当たり、「解決してやる」とカネを要求する。直子の職業は、
警察官だった―。
犯罪に手を染めた警察官を捜査する組織、警視庁警務部人事一課調査二係。
女性監察官泥尻いくみの活躍を描く傑作警察小説四編。
********************************************************************************
監察官 というのは、TVの「相棒」でその存在を初めて知りました^^;;;;

新しいヒロイン・沼尻いくみは、その監察官。
で、読みはじめると、その名前がなかなか出てこない・・・
最後の最後に、もう処分を言い渡すだけになって、やっと登場。

他の短編もそういうパターンで、沼尻いくみが主役というより、彼女に摘発される警察官
が、主人公のようです。
最後の「見つめないで」以外の話は、事件といくみの捜査の関係が、あっさりしてるかな。

どれもおもしろいです。
「免疫力」は、気付いたらヤクザのシノギの片棒を担いでいた警察官の話。
でも、彼は 本当に最初は善意で、手伝ったのは、暴力団から普通に健康食品の会社にでも
変わればいいと、思ったからで・・・彼はどうすればよかったのでしょう。

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2013年07月09日

風紋

風紋〈上〉 (双葉文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 双葉社 (刊)風紋〈下〉 (双葉文庫) [文庫] / 乃南 アサ (著); 双葉社 (刊)
「風紋」 上、下。 乃南 アサ  著  双葉文庫

「犯罪被害者に限定して言えば、事件の加害者となった人間以外はすべて、
被害者になってしまうのではないかと、私はそんなふうに考えている。
そして、その爆風とも言える影響が、果たしてどこまで広がるものか、
どのように人の人生を狂わすものかを考えたかった」-乃南アサ
(amazonの内容紹介より)
**********************************************************************************
父親はゴルフに夢中で浮気もしていて、家庭を顧みない。
長女は、二浪したストレスから家庭内暴力。

はっきりいって破綻してる家庭です。
次女と母親だけの家 という感じ。

突然、母親を殺され、破綻していた家庭は すさまじい逆風にあいます。
被害者家族だけれど、報道はまるで加害者のように、すさまじい取材をかけるんですね。
でも、母親が不倫にはしった理由は、長女と夫に原因があったので、厳密にいえば
この二人は、被害者家族であり 加害者でもあるとおもう。

一方の加害者の家族は、取材から逃げ回る日々で、実家は裕福でも、親戚からいやみをいわれ
身の置き所がない状態。

最後の章で、被害者家族の次女と加害者の元妻が はちあわせ
言いたいこと言い合って、結局、「お互い様・・」という共通認識で別れる。

"加害者以外は、みな被害者”という作者の言葉通りでした。

えげつない報道やしつこい取材、親戚からの嫌味。これらで両方の家族は地獄を見ますが、
”法律を犯すとこういう目にあう”みたいな、犯罪へのブレーキにもなってるかも。

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posted by kiyorin at 00:59| Comment(0) | 乃南 アサ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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