「ニサッタ ニサッタ」 乃南 アサ 著 講談社
気が着けば、今日を生きるので精一杯。
最初の会社を勢いで辞め、二番目の会社が突然倒産し、派遣先をたて続けにしくじったとしても、
住む場所せなくすことになるなんて、思ってもみなかった。
ネットカフェで夜を過ごすいま、日雇いの賃金では、敷金・礼金の三十万円
がどうしても貯められない。
失敗を許さない現代社会で、いったん失った「明日」を、もう一度取り返す
までの物語。
(帯の 宣伝とあらすじより)
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題名の 「ニサッタ」は、アイヌ語で 明日 という意味
500ページにわたる大作です。、二つ分けてもいいかも。
前半 放浪生活東京編 後半 激闘故郷編。
ページ数もしょうど半分くらいですし。
前半は、読んでいてつらかった。正直、読み終わることができないかと。
主人公の片貝耕平は、フっときまぐれで会社をやめます。
上司がしつこく苛めてくるのに耐えられなくて。
(読む限りだと、上手く立ち回れなかったみたい)
正社員を目指しながらも、派遣で食いつなぐ耕平。
そんな時、インフルエンザを悪化させ、派遣先も住むところもなくなります。
今の社会、うっかり病気にもなれないのね。
それから彼のつらい日々は続きます。
ネットカフェに泊まり歩き、サラ金に返すあてのない借金をして、
取立てのにーちゃんに、説教される始末。
「もう、名前を捨てて誰も知らない所へ行きたい。」
「自分なんか生まれなければよかった。」
深刻な欝と厭世観に見舞われます。
最終的に新聞店住み込み。単純な仕事のようですが、時間を分割されるので
肉体的にも精神的にも疲労する仕事です。
(私も、身内が働いていたのでよくわかります)
ちょっとした事件の後、彼は仕事を辞め
故郷・斜里(知床のある町です)に帰る事に。
後半、(私がオホーツク地方に住んでいることもあって)
「今時、こんなに訛っているわけないべさw」←オイオイ
なんてツッコミいれながら、ちょっと明るい故郷編をホっとした気分で読み進めました
耕平君が自立していくのが、読んでいて癒されます。
そんな時に、新聞店の同僚だった杏奈ちゃんが、突然、来道。
わけもわからないまま、耕平の母親と祖母に気に入られ 杏奈ちゃんは、
ウトロで職を見つけ働き出します。
順調に見えた耕平君の生活も、ある日突然終わります。
まあ、自業自得ってとこもあるけど・・・
それでも、東京であれだけひどい目にあって、今度は、こんな目に。
「自分の存在はないほうが、母親や祖母に迷惑かけないですむ」
打ちひしがれた耕平君。絶望から虚無の世界に直行。
ただ、”本当に死にたいほど本人がつらい” というわけでもなさそうだけど
自殺を考えるあたりの 心情が、読んでいてつらい。
やっぱ、もう立ちあがれないのか・・・
そんな中、杏奈ちゃんのすさまじい生い立ちと心境を聞いた事で、
耕平君は、杏奈ちゃんから勇気をもらったのか。自殺の危機から脱します。
”何も残っていない”と悲観する耕平君には、故郷と肉親という大切なもの
が残ってました。
長い話ですが、オススメです。

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”アイヌ”は 私はなるべく ”ウタリ”と言い換えてます。
民族名がそのまま差別とイジメの言葉になった歴史があるので・・