2009年05月07日

いつもの朝に

いつもの朝に  今邑 彩  集英社文庫

成績優秀、スポーツマンで背も高くカッコイイ兄に、チビでニキビで成績の悪い弟優太は、常に劣等感をもってます。
そんな優太が、前半の物語の中心です
あるとき、ユータという名前のぬいぐるみ(テディベア)の中から手紙を発見します。
どうも、死んだ父からのものではなさそう。
その手紙を謎を追ううちに、優太と後には兄の桐人を、出生の秘密という とんでもない嵐に巻き込まれます




この話しはミステリー、ここからは、ネタバレになりますので、
未読の人は
ご注意くださいませ^^;;

まず、読んでいくうちに、「あ。氷点の現代バージョン?」
と思いました。氷点より ある面、シビアだったかも

私が旦那なら、やはり沙羅(優太と桐人の母親)さんの ”子供を引き取る決断”には、絶対反対します

子供を引き取った根底には、沙羅さんの罪悪感もあったのかもしれない
「人は遺伝ではなく環境に左右される」という牧師だった父親の信念を
信じたいのは、わかりますが・・

では、どうすればよかったのか。
母親も死んで天涯孤独の未熟児に、父親の過去から離すために、自分の籍に入れるのは、本当に仕方なかったのかな?

過去が過去だけに、遠くかけ離れた場所に養子に出すという選択肢も、考えてもいいのでは?

絶対に過去は言わない といっても、どこで漏れるかわからない。
今、側にその諸悪の元になったテディベアの表紙絵がをみてますが、
話を読み終わって見ると、怖い・・悪魔の手先のような、

結局、過去の秘密は暴露され、二人とも、ひどく傷つきました。

実の母親だと思ったけど、自分は養子だった。しかも、その母の家族を皆殺しにした犯人の息子が、自分(桐人)だった
そりゃ、悩みますってか、重すぎる十字架です

自殺しようとする兄を必死に助けた優太。
説得する場面は、長丁場ですが
緊張感あふれてます。
やっと立ち直った二人。かわいそうな二人にもやっと光がさし、
母親・沙羅とも話し合い、理解しあいます。めでたしめでたし
 

ですが、後日談がある。これが問題なんです。
”立ち直ってよかった、これで家庭円満”の大円団のようです・・が

兄の桐人は、有名医科大学に進学し、医師になり、あるとき突然、
離島の医師として赴任していきます。使命感にもえてたんですね。
そして結婚もせずに末期肺がんで、36歳で夭折。

結婚をしなかった理由は
”桐人は、マザコンだし、結婚するヒマもないくらい忙しかった。”
のようですが・。

”神の声が聞こえたから、3人を天に召した(殺した)”という
実の父親の精神の異常さが遺伝するのでは、と、
桐人はそんな不安もチョッピリあったのかも

だいたい、優秀な医師のはずなのに、
末期で体中にガンが転移するまでわからない
ってところが、わからない。
わかっていたけど、放っておいたのでは?

最後の肖像画が、安らいだ顔なのは、
「やっと贖罪をえて、死ぬことが出来る」
そんな安堵感なのではないか???


怖いです・・これってホラーで悲劇だったのね・・

後日談はいらなかった・・立ち直って家族仲良く
 で終わらせてほしかったかも

posted by kiyorin at 01:23| Comment(0) | 今邑 彩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月05日

よもつひらさか


よもつひらさか (集英社文庫)

よもつひらさか (集英社文庫)

  • 作者: 今邑 彩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫




「よもつひらさか」  今邑 彩 著  集英社文庫
現世から冥界へ下っていく道を、古事記では
”黄泉比良坂(よもひらさか)”とよぶー。
なだらかな坂を行く私に、登山姿の青年が声をかけてきた。
ちょうど立ちくらみをおぼえた私は、青年の差し出すなまぬるい水を
飲み干し・・・。
一人でこの坂を歩いていると、死者に会うということがあるという
不気味な言い伝えを描く表題作ほか、戦慄と恐怖の異世界を繊細に
紡ぎだす全12編のホラー短編集。
 (裏表紙より)

************************************************************
「見知らぬあなた」「ささやく鏡」「茉莉花」「時を重ねて」
「ハーフ・アンド・ハーフ」「双頭の影」「家に着くまで」
「夢の中へ・・」「穴二つ」「遠い窓」「生まれ変わり」
「よもつひらつか」

の12編です。平均30ページあまりの短編です。
12編、全部、きれいにまとまっているかわり、
話の途中で、オチが見えるので、”戦慄する”ほどではなかったです。

「見知らぬあなた」・・・オチは見えましたが、最後の一文が怖かった
「ささやく鏡」・・・こういうのは、割っても元にもどったりして・・
「茉莉花」・・・ここに出てくる死んだ父親、身分を詐称して、喧嘩を
売りに来る異母妹、どちらもいやなキャラです。

「時を重ねて」・・・調査を頼んだ男は、"男の浮気は許せるけど女の
浮気は絶対許せない”という身勝手さ。妻の浮気相手に嫉妬するというより自分の矜持が傷つけられた 事で怒るところも最低男NO1
でも、そこ以外はファンタジーで、癒されるかな

「ハーフ・アンド・ハーフ」・・・シュプラッター・・
異常さを感じさせない冷静さが怖い

「双頭の影」・・・お寺ミステリー  か 血天井 本当にあるんだ
「家に着くまで」・・口は禍のもと って身にしみたときには遅いか
「夢の中へ・・」・・・途中から「ああそうか」とわかった。母親の
 愛情が身にしみますね(最後の最後でわかる)

「穴二つ」・・・これ、TVの原作かなんかにならなかったっけ?
 見た覚えがあるんだけど

「遠い窓」・・・見方を変えれば、母親の姿の正反対になるんだ。
 死んだ人は美化されやすいのか

「生まれ変わり」・・・現実的な恐怖なら、この作品が一番でしょう
「よもつひらさか」・・・逆にこの坂に入ることが出来るのは、
生と死の境に居る人と、死んだ人ではないかなと。
主人公は、脳貧血を起した時実は、半分死んでたのかも。

実際に怪奇譚は、3つだけで、 他の話は、論理的に説明できます。
ただ、それは人の暗黒面によるものが多く、余計怖いかも

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posted by kiyorin at 23:38| Comment(0) | 今邑 彩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月30日

「鬼 oni」  今邑 彩 著  集英社文庫

引きこもっていた息子が、突然、元気になった。
息子をいじめていた子が、転校するという・・「カラスなぜ泣くの」

かくれんぼの大好きだったみっちゃん。
夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまでたっても姿を現さなかった・・「鬼」

他、言葉に出来ない不安、ふとした胸騒ぎか、じわじわと迫り来る恐怖など、
日常に潜む奇妙な世界を繊細に描く10編の短編集

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(amazonへのリンク 捜せませんでした。すみません^^;)

・たつまさんがころした
・シクラメンの家
・黒髪
・悪夢
・メイ先生の薔薇
・セイレーン
・蒸発
・湖畔の家
を加えた10編です。


「鬼」と「カラスなぜ鳴くの」が、おもしろかったです。
「メイ先生の薔薇」が、突飛だけど、こういう発想しそうな子供、いそうで怖い

途中から 「ああ、これはこうなるんだ」というのが、わかりやすいですが、
それでも、読んでいて飽きません。
ホラーというより、「鬼」などは、むしろ、ほのぼのしてるような^^;;

今邑さんの作品では、「いつもの朝に」のほうが、私には、怖かったです。
”どうしてもGNAの呪縛の恐怖から逃れられなかったのではないか。”と

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posted by kiyorin at 01:35| Comment(0) | 今邑 彩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月16日

ルームメイト

ルームメイト (中公文庫) [文庫] / 今邑 彩 (著); 中央公論新社 (刊)
「ルームメイト」  今邑 彩  著  中公文庫
私は彼女の事を何も知らなかったのか…?大学へ通うために上京してきた春海は、
京都からきた麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、
麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧、
嗜好までも替えていた。茫然とする春海の前に既に死体となったルームメイトが…。
 (「BOOK」データベースより)
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ネタバレ気味になりますので、未読の方は、ご注意を・・^^;


とにかく、これでもかっていうくらい、ルームメイトの別な面がでてきます。
謎が気になるので、急いで読みすすんじゃった。

帯に、「・・・いやあ、まんまと騙されました」
とあるので、疑り深く読んでいったので、「もしや工藤君が?」とかetc

いわゆる多重人格については、あまり知識ありません。
日本人に比較的少ないという事くらいかな。実際に起こった犯罪で、偽造パスポートで
南米から日本にやってきて、女の子を惨殺したあげく、
「自分じゃない、自分の中に悪魔がいるんだ」とか主張してた犯人。
その後、どうなったのだろうか。
TVドラマでも、連即殺人犯が逃亡し、警察が逮捕した処、記憶喪失だった。
で、何人も殺してるので、結果はどうせ死刑だけど、本人、まったく覚えていないのに
そういうのを裁くことが出来るのかとか・・

最後の最後のオチは、実はありがちなんじゃないだろうかなと、思う^^;

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posted by kiyorin at 23:28| Comment(0) | 今邑 彩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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